| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-B-083 (Poster presentation)
南米原産の熱帯果樹であるチェリモヤAnnona cherimola は、その花香が一般的な果実によく似た芳香を示し、日本国内では果実食のクリイロデオキスイCarpophilus marginellus (以下クリイロ)やモンチビヒラタケシキスイHaptoncus ocularis (以下モンチビ)による訪花が確認されている。本研究では、これらのケシキスイムシがチェリモヤの果実様花香に誘引されて訪花している可能性を検証した。揮発性の花香成分に対する定位行動を評価するため、多孔質吸着剤のモノトラップ(GLサイエンス)を徐放剤として用いる生物検定法を考案した。モノトラップにバナナ果実やチェリモヤ花香を吸着させ2種のケシキスイに提示したところ、いずれも60〜70%ほどのケシキスイが定位・接触行動をしめした。そこでモノトラップに吸着した香気成分の自然脱着を確認するため、チェリモヤ花香の主成分であるヘキサン酸エチルをモノトラップに暴露し、その後別容器内で自然脱着する香気を固相マイクロ抽出法で捕集した。ガスクロマトグラフ分析から、暴露時間10秒のモノトラップから自然脱着するヘキサン酸エチルの量が、3時間野外で捕集したチェリモヤ花香と同程度であると推察された。同検定法で主要な花香成分の活性を確認したところ定位活性成分の絞り込みにはいたらなかったが、今回の検証でチェリモヤの果実様花香が果実食ケシキスイを誘引する鍵刺激であることが明らかになった。