| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-B-084  (Poster presentation)

三枝祭りで奉られるササユリの花香が示す抗菌性

*花﨑直史(京都工芸繊維大学), 秋野順治(京都工芸繊維大学), 柳川綾(京都大学), 梶山慎一郎(近畿大学), 瀧川義浩(近畿大学), 松川哲也(近畿大学), 荒井滋(大神神社)

 大宝元年(701年)より奈良県の大神神社では無病息災を祈祷する神事である鎮花祭が執り行われ、その摂社の率川神社では「ゆりまつり」として親しまれる三枝祭が行われてきた。三枝祭ではササユリLilium japonicumを御神花として奉じ、参拝者にもそれを配る習いがある。鎮花祭で献じられるユリ根が薬効をもつことは古くから知られるが、ササユリの花や葉の薬効など実質的効果は良く分かっていない。当研究室ではササユリの葉に抗菌活性があることと花香放出のリズム性を明らかにしてきたが、花香が示す効能については未解明であった。本研究では、花香の抗菌活性について検証するため、1花当たり計10個のモノトラップを用いて18時から翌朝10時まで花香を採取し、そのエーテル脱着液を用いた抗菌性試験をおこなった。検定時には、濾紙に一定容量の花香脱着液を処理し、それをPDA培地上のクロコウジカビAspergillus nigerの分生子約1.0×102個に暴露させた。同様にして、人工的に再構成したササユリ花香とその主要成分についての抗菌性試験も行った。24時間後の分生子発芽率を比較すると、花香処理区では、対照区と比べ約2割の抑制が認められた。その効果は、開花後の経過日数に応じて減少していく傾向が認められた。人工花香では、主要花香成分6物質に強い抗菌活性が確認され、中でもフェニルアセトアルデヒドが最も強い活性を示した。これらの結果から、無病息災を祈祷する神事において、その葉と花香に抗菌性がある開花したササユリを配布することは科学的にも理にかなった行為であったと考えられる。


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