| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-B-090 (Poster presentation)
動物媒植物の花の色は、送粉者が花を識別する際の重要なシグナルである。しかし、植物群集の花色組成と送粉者相の対応関係を、自然群集を対象に調べた研究はない。そこで本研究では、送粉者相の異なる5つの植物群集で、動物媒植物種の花色(反射スペクトル)とその送粉者を記録し、花色組成と送粉者相に対応関係が見られるのか検討した。
調査は、双翅目送粉者の割合が大きい順に、ニュージーランド南島の高山帯(双翅目:膜翅目:鱗翅目 ≒ 9:1:0)、スウェーデン北極圏の高山帯(8:2:0)、スウェーデン北極圏の亜高山帯(7:3:0)、日本(立山)の高山帯(7:3:0)、モンゴルの高原草原(4:4:2)で行った。花色は、300-700nm域の反射スペクトルをもとに、ミツバチ(膜翅目)とキンバエ(双翅目)の色覚モデル、および主成分分析を用いて評価した。なお本研究では、訪花動物種のうち、花間を飛びまわる行動が見られたものを送粉者と定義した。
その結果、調査地域にかかわらず、膜翅目送粉者による訪花が多い植物種のグループには様々な色が含まれていたが、双翅目送粉者による訪花が多い植物種のグループには特定の色(ヒトの色覚で白や黄色)の花がより多く含まれていた。そのため双翅目送粉者の割合が高い群集ほど、花色組成の多様性が低かった。この傾向は、群集を構成する植物種の系統の偏りを考慮しても支持された。
以上の結果から、植物群集の花色組成が、地域の送粉者相を反映して構築されていることが示唆された。