| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-B-091  (Poster presentation)

リョウブと内生菌の共生関係に影響する環境要因:重金属及び放射性Cs

*星美咲(筑波大学院・生命環境), 山路恵子(筑波大学・生命環境系), 升屋勇人(森林総研東北)

東日本大震災後に伴う福島第一原発での爆発事故により環境中に放出された放射性核種の生物への影響評価研究は、現在、多方面で推進されている。森林生態系において、微生物は様々な植物と共生系を築き、森林生態系の基礎となる重要な存在であるが、放射性核種は微生物の群集構造や挙動に影響することが知られている。植物と微生物の共生関係の特徴的なものとして、重金属環境における共生系があるが、本研究では、重金属環境で形成されるリョウブと内生菌の共生関係に着目し、本相互作用が放射性核種によりどのような影響を受けるのか解明することを目的とした。具体的には、放射性Csの濃度及び重金属濃度の異なる6か所の調査地を設定し、リョウブ内生菌相や化学的機能を分析し、放射性Csや重金属が内生菌に与える影響について統計学的解析に基づき評価した。内生菌の化学的機能としては(1)リョウブの重金属耐性に関与すると考えられるZn錯体形成物質産生能、(2)放射線及び重金属ストレス環境下での菌の耐性・定着に関与すると考えられるメラニン色素産生能を分析した。その結果、リョウブの内生菌相は、重金属や放射性Cs濃度の影響を受け変化すると考えられたが、本研究調査地の重金属環境の内生菌相は重金属濃度により影響を受けていることが明らかとなった。また、放射性Csの影響により、重金属耐性に関与するZn錯体形成物質の産生やメラニン色素の産生が増加する菌種が確認された。以上のことから、本調査地における重金属環境においてリョウブの内生菌相は維持され、内生菌の化学的機能は放射性Csの影響は受けるもののリョウブの重金属耐性を高める可能性があると考えられ、リョウブと内生菌の共生関係は維持されると推測された。


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