| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-E-162  (Poster presentation)

奄美大島における二ホンミツバチのコロニー成長と採餌活動 ―観察巣箱を用いた調査―

*工藤遥香(中大院・理工), 藤原愛弓(東大院・農), 鷲谷いづみ(中大・理工)

ミツバチはおよそ数万個体から成るコロニーの維持のために、季節を通じて花資源を採餌する過程で、野生植物、作物の授粉・送粉に寄与する。働き蜂は効率の良い花資源利用のために、8の字ダンスと呼ばれる巣板上で踊られる尻振り行動を用いて、有益な餌場の位置情報を伝達することが知られている。ニホンミツバチの生息の最南端に位置する奄美大島は、陸地の約8割が森林であり、森林の花資源を高頻度に利用するとされる野生のニホンミツバチ(以下、ミツバチ)が多数生息する。本研究では、奄美大島に生息するミツバチの採餌活動の空間的把握に資するため、透明巣箱によるダンスの解析と、一部ドローンによる空中写真の撮影から、採餌に利用する植生パッチの把握を行った。調査は、奄美大島の森林と果樹園がモザイクをなす地域(本茶峠)と、畑地に囲まれ、約1.5km離れた場所に森林が存在する笠利の二ヵ所で行った。ガラスを木枠にはめこみ作成した巣箱にミツバチコロニーを導入し、ダンスの解析により餌場までの距離と方角を推定するとともに、ドローンで把握した空中写真から利用する植生パッチを推定した。
その結果、採餌距離は本茶峠の群れが平均0.630km(n=20)、笠利の群れが平均1.909km(n=33)となった。本茶峠の群れの方が笠利の群れと比較してより近距離で採餌を行っていることから、ミツバチは樹林の花資源を高頻度に利用していたと考えられる。笠利では、近距離にタンカンなどのミツバチによる花粉利用が確認されている植物があったにも関わらず、遠方にある樹林まで飛んでいたことから、近距離にまばらに存在する花資源よりも、遠くても、まとまった花資源パッチを利用する可能性が示唆された。ドローンを用いた鮮明な空中写真、ダンス、ダンス個体の花粉荷の分析を組み合わせた解析により、ミツバチの採餌活動の空間的パターンを詳細に把握することが可能であると考えられる。


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