| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-E-165 (Poster presentation)
八丈島の市街地には,ビロウをはじめヤシ類が街路樹として多く植栽されており,それらに着生シダが定着して生育している。そこで,本研究では八丈島に植栽された街路樹ビロウが着生シダの市街地への進出における新たなハビタットとして寄与している可能性があるという仮説のもと,八丈島における着生シダの分布特性を解明するとともに,特有な樹形を有するヤシ類がもたらす着生シダの多様性への影響について,その現状を把握することを目的とした。
着生シダは,沿岸部に比べ市街地の方が出現頻度が明らかに高く,種によって出現頻度にばらつきがあるものの,市街地を生育地として好んでいることが明らかとなった。また,着生シダの供給源であると考えられる八丈島の山でも,着生シダが生育しているか分布調査を行った。その結果,山中と市街地では出現種が一部異なっていた。
八丈島の山は,燃料革命以前に短期間かつ広範囲で樹木が伐採され,マツバランなどは山中の一部地域では絶滅している。また,経済的価値があるオオタニワタリなどは乱獲のために現在はほとんど自生はみられない。この2種に関して,今回の調査では,山中でもヤシ類に定着していたもの以外は発見できなかった。これらの分布調査のほかに,ビロウの樹形を考慮して,1本に対する部位毎での着生シダの種組成等も明らかにした。
これまでの調査から,市街地の街路樹のヤシ類の一部および八丈植物公園内に植栽されているヤシ類に着生シダが確認できることから,着生シダは植栽されたヤシ類をハビタットの一つとして利用していた。また,八丈島に本来生育していたものの,現在は市街地には出現しているにもかかわらず山中で見られない着生シダがあることから,未だに山中では着生シダの生育地が回復していないことが考えられる。このことから,市街地のヤシ類は着生シダの生育地として重要であるといえる。