| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-E-167  (Poster presentation)

海洋島における固有爬虫類の集団遺伝構造:オガサワラトカゲを例に

*小関丈一朗(東北大学), 森英章(一般財団法人自然環境研究センター), 牧野渡(東北大学), 牧雅之(東北大学), 占部城太郎(東北大学), 戸田光彦(一般財団法人自然環境研究センター), 千葉聡(東北大学)

海洋島はその生態系の特殊さのため、外来種によって本来の生態系が脅かされる例が多く報告されている。小笠原諸島にはグリーンアノール(Anolis carolinensis)が父島、母島、兄島の一部に侵入している。アノールは在来の昆虫が捕食するだけでなく、固有の爬虫類であるオガサワラトカゲ(Cryptoblepharus nigropunctatus)との競合が示唆されており、父島では個体数が減少している。またオガサワラトカゲはアノール駆除用トラップへの混獲が起きており、当該箇所では生息密度が減少している。それらの影響評価や今後の対策立案には遺伝学的情報が不可欠である。本研究では、マイクロサテライトDNAを用いてオガサワラトカゲの集団遺伝学的解析を行った。

解析対象として12島、31地点から採集した367個体を用いた。新規開発した9種のマイクロサテライトマーカーを用いて集団遺伝学的解析を行った。また集団遺伝学的解析によって明らかになった各集団を対象に、ベイズ法による集団動態履歴推定を行った。

解析の結果、父島列島内において遺伝的に異なる3つの集団が存在することが判明し、必ずしも同じ列島内の集団が同一の集団で形成されないことが示唆された。一方同一島内では遺伝的分化は生じていないことが分かった。遺伝的多様性は、個体数の減少が示唆される父島と面積が小さい属島において低い傾向にあった。集団動態履歴推定の結果、父島列島内に存在する異なる遺伝的集団は、500年以内に起こった他の列島から個体の移入による遺伝子浸透によって生じたことが推定された。これらの結果から島を保全単位として捉える必要があること、アノール駆除時の混獲により島の一部で個体数が減少しても、同一島内からの再導入が可能であることが示された。


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