| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-E-169 (Poster presentation)
兵庫県の北部、但馬地域の豊岡盆地ではコウノトリの野生復帰事業により、コウノトリの採餌環境確保のための環境整備が実施され、野外でコウノトリが生活し、繫殖している。一方、兵庫県の南部、播磨平野には数多くのため池と水田地帯があり、度々コウノトリの飛来が確認されているが、同一個体が3か月以上連続して滞在した記録はない。東播磨地域では平成28年度(2016年)より、ため池・水田に飛来するコウノトリの飛来頻度増加と定着を目指した環境整備が開始されたが、コウノトリの採餌環境を評価できるデータは存在しておらず、水田やため池に生息する餌動物に関しても定量的な調査が実施されていない。そこで、本研究では、2016年に東播磨地域4地区で実施した水田動物群集の調査結果を、2015年の豊岡盆地3地区の調査結果と比較することにより、コウノトリの餌場としての東播磨地域の水田の評価を行う。
東播磨地域の水田調査は明石市江井ヶ島地区、稲美町野寺地区、加古川市薬栗地区、高砂市阿弥陀地区の4地区で2016年6月に実施した。調査圃場選定基準はコウノトリの飛来記録がある地区とし(ただし、稲美町野寺地区はマナヅルの越冬確認地区)、地区内の調査圃場はランダムに選定した。また、豊岡盆地の餌動物情報は、豊岡市三江地区、新田地区、五荘地区の3地区で2015年の6月に実施した調査結果を用いた。
分類群数、個体数密度ともに東播磨地域よりも豊岡盆地が多かった。出現生物を綱レベルで整理・解析した結果、豊岡盆地では昆虫綱が多く、東播磨地域では腹足綱が多かった。また、東播磨地域では加古川地区に両生綱が多かった。
本発表では、農事歴の差異などの地域差を踏まえ、コウノトリの採餌環境として、東播磨地域の水田を評価し、餌動物増加の方策を探る。