| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-E-172  (Poster presentation)

市川市大町自然観察園におけるシオヤトンボの生息環境

*藤川大輔(明大・農), 金子謙一(市立市川自然博物館), 倉本宣(明大・農)

本研究対象のシオヤトンボ(Orthetrum japonicum)は平地から低山地の浅い池沼や湿地、水田、休耕田などに生息し、全国に広く分布する普通種のため生息環境についての研究はほとんど行われていない。しかし、近年、特に平野部では減少が目立ち、東京都の本土部では準絶滅危惧種に指定されている。
本研究では、シオヤトンボの個体数と環境要因を調査し、本種が選好する環境を考察した。

千葉県市川市の長田谷津の一部である大町自然観察園に調査地点A、B、C、D、Eを設定し、地点ごとに環境調査として水草被度、周辺樹林率を目視により確認し、全天空写真を撮影した。シオヤトンボ調査はヤゴ調査、抜け殻調査、成虫調査に分けて行い、成虫調査は、歩道と水域を区別し、ライントランセクト法により行った。シオヤトンボに悪影響を与えると考えられるアメリカザリガニも調査対象とした。アメリカザリガニ調査の際には水深も記録した。

水草被度が最も高く、水深が最も浅かった地点Eにおいてシオヤトンボのヤゴ、抜け殻、水域の成虫個体数が最も多く、アメリカザリガニの個体数は最も少なかった。周辺樹林率が最も低く、全天空隙率が最も高かった、すなわち光環境が最も良かった地点Bにおいて歩道の成虫個体数が最も多かった。また、光環境の最も悪かった地点Dにおいてはシオヤトンボがほとんど見られなかった。

以上のことから、シオヤトンボは水草被度が高く、水深が浅く、光環境が良い環境を選好することが示唆された。また、アメリカザリガニはヤゴの捕食、水草の食害などシオヤトンボに悪影響を与えている可能性があることが示唆された。


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