| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-E-178 (Poster presentation)
森林と渓流が接する河畔林は水域と陸域をつなぐ特異的な景観要素であることから、生物多様性が高い地域として重要視されている。しかし、その関係に着目した研究はまだ少ない。日本に広くみられる里山は森林と渓流が接する景観の代表例とみなすことができる。
本研究では里山の小渓流が周辺の森林に生息する生物の多様性の向上に重要な役割を持っているのではないかと考え、多数の小渓流を対象として解析を行うことで、環境要因と生物多様性の関係を明らかにすることを目的とした。また、生物の調査対象としては生態特性などの情報が得やすく、種の確認も容易で、食性などの生活様式が多様な鳥類を用いた。河畔林にはその周辺の森林よりも森林棲鳥類が多いことが北米など海外の研究事例から報告されていること、水生羽化昆虫の発生に合わせて活発に河畔林を利用することが示されていることから森林棲鳥類にとって水の存在が重要であると考えられる。また、夏季と冬季では夏鳥と冬鳥など鳥類の種構成が大きく変化し、生活や行動も異なる。これらのことから、小渓流の集水域のサイズや水量を始め、森林植生や地形の違いが、森林棲鳥類の種数や個体数に影響を与えること、また季節によってそうした環境条件への応答が変化するかどうかを検証した。
本研究では東京都八王子市の里山林内の小渓流25本において森林棲鳥類群集の季節動態や環境条件を調査した。鳥類群集と水条件や植生条件等の環境要因との関係は一般化線形モデルを用いて明らかにした。その結果をもとに里山の保全を考える上での1つの方向性の示唆を得ることを目指す。