| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-F-184  (Poster presentation)

繁殖海域を共有する海鳥は餌資源を分け合っているのか?―糞のDNAから探る採食戦略―

*小村健人(京都大院・農), 安藤温子(国環研), 堀越和夫(NPO法人小笠原自然文化研究所), 鈴木創(NPO法人小笠原自然文化研究所), 井鷺裕司(京都大院・農)

ミズナギドリなどの外洋性海鳥は広い採食域を持ち、海洋生態系の高次捕食者として大きな役割を担っている。生物多様性ホットスポットである小笠原諸島には、5種のミズナギドリ科を含む16種類の海鳥が繁殖しているが、それらが海洋の食物資源をどのように分割して共存しているのかは分かっていない。しかし、採食行動の観察による食性調査は困難であり、胃内容物を用いた分析結果も断片的な情報に留まっている。そこで、非侵襲的かつ高解像度な食性解析法である、糞のDNAメタバーコーディングを行うことにより、繁殖海域を共有する外洋性海鳥2種の食性を比較し、ニッチ分割機構を探ることを試みた。

小笠原諸島において同所的に繁殖する2種のミズナギドリ:普通種オナガミズナギドリPuffinus pacificusと固有亜種であり環境省の絶滅危惧ⅠB類に指定されているセグロミズナギドリPuffinus lherminieriを対象とし、父島属島において繁殖期前期 (2015年, 2016年5月)と育雛期中~後期 (2015年, 2016年9月)に採取した糞からDNAを抽出した (計258サンプル)。脊椎動物に特異的なmtDNA 12S領域をバーコード領域に設定し、次世代シーケンサーを用いて糞に含まれる塩基配列を解読した。得られた塩基配列をNCBIに登録されているデータベースと照合し、糞中に含まれる脊椎動物の同定を行った。その結果、オナガミズナギドリは繁殖期を通してハダカイワシ科やデメエソ科などの中深層遊泳魚に強く依存した餌構成であったのに対し、セグロミズナギドリの糞からは繁殖期を通してトビウオが最も多くの割合で検出された一方、中深層性遊泳魚はほとんど検出されなかった。本研究により、繁殖時期や繁殖海域が重複する2種の餌組成は大きく異なることが示され、同一地域の外洋に共存する異なった種類の海鳥が餌資源の分割を行っている可能性が示唆された。


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