| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-F-188 (Poster presentation)
オオタカAccipiter gentilisは,主に農耕地, 森林, 集落がモザイク状に存在する地域に生息するタカ類である. しかし近年,本来の生息環境とは異なる都市部にまで分布を広げ, 東京都心部では2000年以降繁殖活動まで行うようになった. なぜ都市進出できたのだろうか?都市進出要因の一つとして, オオタカの餌となる生物が都市で増加していることが示唆されているが, 国内外の都市における本種の餌動物に関する研究報告は非常に限られている.
以上の背景から, 2015年と2016年の繁殖期に東京都23区内にある都市公園と明治神宮で繁殖するオオタカの給餌内容を調査した. 都市公園では,2015年5月中旬から8月中旬まで直接観察を行い, 2016年は直接観察とペリットの収集を2月末から7月中旬まで行った. 明治神宮では,2016年に食痕調査とペリット収集をそれぞれ5月下旬から7月上旬, 6月上旬から7月上旬まで実施した.
結果, 両調査地で鳥類ではムクドリSpodiopsar cineraceusとドバトColumba livia が主な餌となっていた. 重量では, ハト類が最も多く次いでムクドリとなった. 都市公園ではムクドリとハト類の割合は雛の孵化前後, 巣立ち前後で変化した. 明治神宮では主にハト類, ムクドリに加えてクマネズミ属(主にドブネズミRattus norvegicus)となり, 餌動物種に対する選好性があった. 餌動物の種数は都市公園よりも多く, 種構成が調査地で異なっていた.
ムクドリやキジバトStreptopelia orientalisは,オオタカが繁殖し始めた2000年頃に向けて都心部で分布拡大傾向をみせていた.このような餌動物の都市部での増加がオオタカの都市進出に影響した可能性がある.