| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-F-193 (Poster presentation)
親が出産前後に子の数を調節すること(産子調節)は、産子数自体を変えることだけでなく、出産直後に親が子を共食いすることによっても達成できる。しかし、子の捕食リスクに応じた産子調節の例はほとんど知られていない。卵胎生魚類であるグッピーPoecilia reticulataでは様々な対捕食者戦略が発達しているが、一時的な産子調節はいまだ知られていない。そこで本研究ではグッピーを用いて、異なる捕食様式を示すミナミテナガエビMacrobrachium formosense(実験1)またはカワヨシノボリRhinogobius flumineus(実験2)の存在下で、産子調節がみられるかを調べた。
実験1では、産子間近のグッピー(N = 36)を2群に分け、捕食者および捕食された稚魚から出る匂いがある処理と、匂いのないコントロール処理のいずれかを施した。実験2では、実験1と同様にグッピー(N = 27)を2群に分け、さらに、親による稚魚の共食いを防ぐ処置を行った上で、匂い処理とコントロール処理を施した。
その結果、捕食者としてミナミテナガエビを用いた実験1では、匂い処理において産子数が63%減少した。このことから、グッピーが一時的に産子数を減らし(産み控え)た可能性、および親による子の共食いが生じた可能性が示唆された。実際に予備実験の結果から、本種における親による共食いがあることが示された。他方、捕食者としてカワヨシノボリを用いた実験2では、匂い処理による産子数の減少が見られなかった。これは、カワヨシノボリによる捕食圧や捕食された稚魚からの匂いの出方がミナミテナガエビとは異なったため、もしくは実験2では共食いの影響を排除したためであると考えられた。
以上から、グッピーは出産前後の短期間の被食リスクに応じて、産み控えもしくは共食いの増加といった、何らかの産子調節を行っている可能性が示唆された。