| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-F-198  (Poster presentation)

そんな大きさで大丈夫?-イソヘラムシのオスの体サイズはなぜ多様なのかー

*三浦裕人(北大院(水産)), 五嶋聖治(北大博物館(水産))

多くの動物で体の大きさには性差がある。平均体サイズの性差は体サイズの性的二型 (SSD) と名付けられ、非常に多くの研究例がある。一方、体サイズの分散の性差 (SSV) に着目した研究は、演者らが知る限り、まったくない。SSVは、成長速度の分散の性差や生存率(寿命)の性差を反映するものであると考えられ、最適な体サイズの性差を反映するSSDとは、適応的意義や至近的メカニズムが異なると推測される。

本研究ではSSVが形成されるメカニズムを解明することを目的とし、等脚目の一種イソヘラムシ Cleantiella isopus を対象に、個体群構造や子の性比を調べた。

各月の体サイズ分布を調べた結果、オスの体サイズ分布は二峰性を、メスは単峰性を示し、体サイズの分散はほとんどの月でオスの方が大きかった。繁殖は2月から3月(1回目)と、5月から6月(2回目)の2回観察され、子の性比は1回目の繁殖期ではメス寄りであったが、2回目の繁殖期ではオスが9割以上を占めた。このため、ほとんどのメスは1回目の繁殖期で孵化するが、オスは両方の繁殖期で孵化すると考えられる。つまり、異なる繁殖期で生まれてくる子の性比に違いがあることが、本種で見られるSSVの原因であると示唆される。


日本生態学会