| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-F-204 (Poster presentation)
社会的に一夫一妻性の鳥類の9割以上では、メスがつがい相手以外の子供を残す「つがい外父性」という現象が確認されている。コロニーで繁殖する海鳥のオスは、つがい外不正を防ぐために巣周辺でつがい相手を防衛すること、自身のコンディションを保つために、定期的にコロニーを離れて採餌に出かけることの両方が必要である。このことから、オスがつがい相手の防衛にどれくらいの時間を費やすかが、つがい外父性の有無に影響する可能性が高い。本研究では、一夫一妻で年に1羽の雛を育てるオオミズナギドリ(Calonectris leucomelas)を対象とし、バイオロギングによる各個体の越冬期間から交尾期間までの行動時間配分の、つがい外父性への影響を評価することを目的とした。
2014年から2016年にかけて、岩手県船越大島で繁殖する親鳥339個体とヒナ116個体の羽からDNAを抽出し、マイクロサテライトDNA分析による親子鑑定を行って、つがい外父性を検出した。また、つがいに小型記録計を装着して、照度、着水頻度、水温データを記録した。記録データの解析から、越冬期から交尾期間までの個体の行動を島滞在、採餌、休息、飛翔の4つに分類し、各個体の行動時間配分を調べた。
18個体9ペアのデータ解析結果から、越冬期間の行動時間配分に性差はなかった。交尾期間である5月から6月中旬では、すべてのつがいでメスよりオスの島滞在時間が長かった。オスは短い採餌トリップを繰り返し、島に戻る頻度も高かった。つがい外父性が起きたオスと起きなかったオスの交尾期間中の行動時間配分を比較すると、前者の島滞在時間の割合が高い傾向にあった。観察結果からつがい内交尾は巣内で行うこと、巣内に入ってくる他個体を追い出すことがわかっている。これらのことから、つがい外父性が起きたオスは、島に滞在中に巣内に滞在している時間は短く、つがい相手を防衛していた時間は短かったという可能性がある。