| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-F-206 (Poster presentation)
オオシロアリ Hodontermopsis sjostedti はコロニーを創設した後1つの巣材の中だけでコロニーのライフサイクルが完結する単一材営巣種であるとされている。しかしこれまでのオオシロアリの野外巣の調査では、生殖虫が見つからない巣が少数報告されており、実際にはオオシロアリのコロニーは近傍に存在する複数の巣材を利用している可能性が考えられる。私たちが最近行ったマイクロサテライト遺伝マーカーを用いた野外巣の遺伝子型頻度の調査結果からも、オオシロアリが単一材営巣種ではなく、複数の巣材にまたがって営巣する中間型営巣種であること、いくつかのコロニーで近親交配と同時にコロニー間の融合が起きていることが示唆されている。
本研究ではまず、コロニー融合の様相をより詳しく知るため、13の野外巣の個体を用い、COⅡ、AT-richの2つのミトコンドリア遺伝子領域について10の制限酵素を用いてPCR産物の切断片長多型のスクリーニングを行った。その結果、AT-rich領域の1カ所に多型がみられた。この遺伝子座では、1つの巣から複数のハプロタイプがみつかったのは2コロニーであり、いずれもマイクロサテライト多型から融合が示唆されているコロニーであった。
シロアリのコロニーの成長に伴い、コロニー構成個体のサイズも大きくなる可能性がある。コロニーサイズと体サイズに相関があれば、一部のコロニーメンバーの体サイズからコロニーサイズを推定できる可能性がある。そこでソルジャーの体サイズ(頭幅と前胸背板幅)を計測し、これらと、遺伝子調査から推定されたコロニーサイズ、性別、コロニーの相違との関係について一般線型モデルで解析を試みた。その結果、頭幅と前胸背板はともに、コロニーサイズではなく、コロニーの相違と関連があるという結果となった。