| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-F-209  (Poster presentation)

ヨコヅナサシガメの羽化と性成熟に及ぼす気温・日長の影響

*武田竜典, 秋野順治, 長岡純治(京都工芸繊維大学)

ヨコヅナサシガメAgriosphodrus dohrni Signoretは、京都近郊では年1化の生活史をもち、終齢幼虫で越冬して翌年4月頃に羽化すると、その後1ヶ月ほどの間に交配・産卵する。羽化直後の雌雄間では配偶行動が認められないものの、羽化後6日以上経過するとその頻度が増加し始めることから、雌雄成虫の性成熟度が配偶行動に影響を及ぼす可能性があることを、先行研究により指摘した。今回、3~4月にかけて採集し、研究室内で25℃、14L10D条件で飼育した越冬幼虫は約1ヶ月以内に全てが羽化し終え、雌雄成虫から摘出した内部生殖器の形状を羽化後日齢別に比較したところ、羽化後1週間ほどで精巣の無色透明部に対する橙色部の割合、卵巣小管の膨満度が急速に増加した。一方、夏季(8月)採集終齢幼虫を高温長日下(25℃、14L10D)で飼育し続けると、全て幼虫越冬に入ることなく、晩秋(11月頃)から約5ヶ月間かけて羽化した。これらの成虫の性成熟は、休眠を経て羽化した成虫を比べて、明らかに遅延していた。さらに、冬至に採集した個体を高温長日下で飼育すると、約2週間後に羽化が始まり1ヶ月間程で羽化し終えた。これらの成虫の性成熟は、休眠を経て羽化した成虫と比べて若干の遅延傾向にあったものの、羽化後2週間程で完了した。これらの結果から、越冬経験による低温もしくは短日は、羽化の斉一化と性成熟を促す働きを持つものと推測される。


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