| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-F-213 (Poster presentation)
カスミサンショウウオ幼生の光周反応に与える温度と餌の効果
増田萌子*・中村圭司(岡山理科大・生地)
カスミサンショウウオは早春に産卵し、秋までに変態が終了して幼体が陸上生活に移る。しかし、岡山県北部では変態せずに幼生で越冬する個体が存在することが知られている。先行研究により、カスミサンショウウオは日長が短くなるにつれて発育速度が上がり、早く変態することが分かっている。しかし、野外における観察結果を考慮すると、岡山県北部では短日の日長で変態を抑制することで、温度変化が少なく安定した水中生活を長く送り、翌年変態する生活史を送る方が適応的と考えることも可能である。そこで、成長が遅くなる要因として考えられる条件として餌不足と低温を仮定し、これらを与えた飼育条件下において、光周期がカスミサンショウウオの体サイズ変化および変態までの日数に与える影響について調べた。
2016年4月中旬に、カスミサンショウウオ卵のうを岡山県真庭市(北緯35.3度、標高540m)で採集した。孵化した幼生を容量200mlの飼育容器に1頭ずつ入れ、10℃および15℃の16L-8Dと12L-12D条件で飼育した。餌はすべての個体に幼生期間を通じて一定量与えた。定期的(実験開始直後から4週間おき)に写真を撮影してサイズ変化を記録した。外鰓が消失した時点で実験を終了し、体重、体長および頭幅を測定した。
15℃において変態するまでの日数を比較したところ、12L-12Dの短日条件のほうが長くなった。また、それに伴い、体重、体長も短日条件のほうが大きくなった。これらの結果は餌を充分に与えた先行研究とは異なる結果であり、カスミサンショウウオの幼生は、餌が少なくなることにより光周期に対する反応が大きく変わることが分かった。すなわち、餌不足により成長が遅くなり、冬までに変態することが困難な状況になったときには日長に対する反応を切り換え、幼生で冬を越すという生活史戦略をとっているものと考えられる。