| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-H-248 (Poster presentation)
典型的なクローナル植物であるササは、地下茎による平面的なクローン成長によって光環境が不均一な林床でもしばしば密生する。これは、地下茎を通じて同化産物や養分などの資源の転流が可能なため、林床のように光や土壌養分が不均質な環境で効率的な資源利用ができるからだとされている。こうした特性は、一斉開花枯死後のササ群落の回復にも寄与しているのだろうか。演者らは、これまでにササ群落の回復速度は光条件に依存すること、閉鎖林冠下ではクローン成長により平面的に分布を拡大したジェネットが回復に大きく寄与していることを明らかにした。さらに、地下茎の追跡調査により、林冠ギャップから閉鎖林冠下に侵入しているジェネットがあることも確認した。そこで本研究では、閉鎖林冠下の群落回復に資源転流が寄与しているかどうかを確かめるために行った、地下茎の切断実験について報告する。
1995年にチシマザサが一斉開花枯死した秋田県十和田湖南岸域のブナ林内で、林冠状態を3区分して行った(閉鎖林冠下、半閉鎖林冠下、ギャップ)。各々に調査区周囲の地下茎を切断した切断区とコントロール区(いずれも3x3m区計14区)を設け、2014年より毎年各調査区内のササの動態を調べた。マイクロサテライト7遺伝子座により調査区内の全稈のジェネット識別を行い、各稈の太さと稈齢を調べ、稈の太さと稈齢からアロメトリー式を用いて地上部バイオマスを推定した。各ジェネットは地下茎の伸長状況を調べ、調査区内で発芽した定着ジェネットと周囲から地下茎により侵入してきた侵入ジェネットに区分した。2014年から2016年の3年間の調査では、切断区とコントロール区で顕著な違いは見られていないが、本報告では各処理区の定着、侵入ジェネットの動態について3年間の変化を報告する。