| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-H-251 (Poster presentation)
北海道の湿地林の主要構成種であるアカエゾマツ(Picea glehnii Masters)は,湿原の過湿な環境にどのくらい適応できるのかは分かっていない.そこで,オホーツク海沿岸で最も規模が大きい浅茅野湿原で,アカエゾマツが生育している微高地(マウンド)の高さ・面積・体積やマウンド上の植物群落組成,アカエゾマツ樹高と活力度調査を行うことで,アカエゾマツの生育適地を明らかにした.マウンドに分布するアカエゾマツの最大活力度は,マウンドサイズが大きくなるにつれて高くなった.一定の値以上の高さ・面積・体積のマウンドでは最大活力度が3ないし4となり,枯死木だけのマウンドは見られなかった.アカエゾマツの活力度は,樹高が高くなるにつれて低くなっていた.マウンド上の植物群落組成は,アカエゾマツの最大活力度に応じて変化し,出現した57種のうち,チマキザサ,コヨウラクを含む16種がアカエゾマツの最大活力度が高いマウンドほど頻繁に出現し,ツタウルシ,ミズバショウを含む13種がアカエゾマツの最大活力度が低いマウンドほど頻繁に出現していた.マウンドサイズが大きいほどアカエゾマツの最大活力度が高いのは,マウンドサイズが大きくなることで,地下水面と地表面との間に根を張る場所を確保でき,より乾燥した環境に根を張ることができるためだと考えられる.アカエゾマツの樹高が高いほど活力度が悪くなるのは,成長に伴って根の量が増加し,過湿な条件にさらされる根の割合が大きくなるためだと考えられる.アカエゾマツの最大活力度が高いマウンドほど頻繁に出現する種は,湿原外の針葉樹林の比較的乾燥した林床を生育地とする植物である.一方,アカエゾマツの最大活力度が低いマウンドほど頻繁に出現する種は,低層湿原など湿った環境を生育地とする植物で,過湿な環境を指標している.本研究では,アカエゾマツの生育は,湿原の過湿な環境に影響を受けることを明らかにした.