| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-H-254  (Poster presentation)

気候変動下にある分布南限および下限にあるブナ林の動態

*小山有夢(東北大・理・生物), 中静透(東北大・院・生命科学)

  近年、気候変動が生態系に与える影響は顕著になりつつある。日本の冷温帯林に特有なブナ林各地においても、生態系の変化が報告・予測されており、特に分布南限および下限にあるブナ林の衰退が懸念されている。しかし、その変化の実態の把握は十分でない。本研究は、気候変動下にある分布南限および下限にあるブナ林の実態を広い範囲で明らかにし、今後の変化予測に役立てることを目的とする。
 環境省が1980年代に選定した特定植物群落におけるブナ林について、1980年代当時の気候データや地形・地質データを変数に、ランダムフォレストを用いてブナの存在確率を算出した。また、そこで作成したモデルと2010年代当時の気候条件を用いて、2010年代における存在確率とその1980年代とのの差も計算した。さらに、ブナの存在確率が低い地点(分布南限および下限、以下非適地)と高い地点(適地)について、それぞれ20地域を選定して現地調査(高木・亜高木の毎木調査と低木層・実生種の記録)を行った(現在まで13地点で分析)。
 その結果、適地の多くではブナが高木から低木・稚樹まで存在するが、非適地の多くでは高木層もブナ以外の樹木が優占し、稚樹がほとんど存在しないことがわかった。したがって、非適地では今後ブナ林としては維持されず、他の森林へ変化していくことが予測される。


日本生態学会