| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-H-255 (Poster presentation)
森林面積の縮小で林内環境の変異は減少し、群集構造は単調化する。松木日向緑地は、一定の面積を有し起伏に富み、広い森林にも近いので、著しい単純化を免れている可能性がある。また、薪炭林だったので、コナラからシラカシへの遷移が進んでいると考えられる。そこで、緑地内の多様な環境を含む調査区を設置し、植物群集の特徴と微地形と環境要因を記述し、コナラとシラカシの個体群構造を比較した。松木日向緑地に、長さ1 m、奥行き4 mのプロット616区を連ねたベルトトランセクトを設置し、高さ0.5 m以上の木本の種や位置やサイズを測定した。高さ0.5 m未満の実生の有無も記録し、シラカシとコナラの実生を計数した。タケとササの稈数も計測した。また、土壌のpHや夏と冬の開空度、相対標高も測定した。
調査区には49種1309本の木本植物が存在し、アオキ、ヒサカキ、シラカシの順で木本数は多く、シラカシ、コナラの順に積算胸高断面積は大きかった。胸高直径15 cm未満のコナラは無く、シラカシは多かった。土壌の平均pHは5.87、平均開空度は、夏に10.0%、冬に17.8%だった。相対標高で分類した谷には、コナラ実生が少なく、シラカシ実生は多かった。コナラ実生がある区では冬の開空度と土壌のpHが高く、シラカシ実生がある区では低かった。また、ササがある区で、コナラ実生が多くシラカシ実生は少なかった。
松木日向緑地には、近隣の大面積の森林と同程度の植物種があり、地形や環境要因の変異は大きく、小面積化の影響は小さいと考えられる。また、コナラ実生が優占する区の多くは、冬の開空度が高く、シラカシ実生の生残や成長に適するが、土壌のpHはシラカシ実生が分布する区と異なった。コナラと同所的に生育するササはシラカシ実生と排他的に分布するので、コナラが完全にシラカシに遷移するかは現時点では分からない。