| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-H-256  (Poster presentation)

相互作用による樹木受光量のシミュレーション

*野々山朋信(東北大学)

 樹木の生長が示す形状は、その構造の規則性と多様性から、古くから研究の対象となってきた。近年のCG技術の進歩によって、現実に即した立体的な樹木構造が人間の目には違和感のない水準で構築され多様な用途に用いられている。しかしながら、生態学においては3次元的な樹木構造を用いた研究例は少なく、可塑性によって樹木の生態にどのような影響があるのか、ほとんど研究されてこなかった。また一方で、樹木のバイオマスは非破壊的に測定する事がむずかしく、構造や生育に長時間を要するため、指標としては用いづらいという側面があった。
 そこで本研究ではバイオマスへ大きな影響を及ぼす受光量を指標とした樹木モデルを構築し、種間や個体間の相互作用による影響を調査した。このモデルで生成された構造は枝垂れや枯死が再現され人間の目から見ても樹木構造として違和感のないものである。
 このモデルを用いて同数の異なる2種が交互に生える森林を構築し、2種の受光量と、森林全体の受光量がどのように変化するのか調査した。森林全体としての受光量はそれぞれの種類のみからなる森林の場合と比べて優位に受光量が増加することがわかった。異なる種からなる森林の方が単一の森林よりも収量等において有利である可能性がある。これは異なる樹種を  混合した植栽により、果樹の総生産量が向上するという効果を説明するひとつの理由である可能性がある。今後このモデルは樹木という測定の難しい対象において様々な応用的な調査が可能であると考えられる。


日本生態学会