| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-H-260  (Poster presentation)

暖温帯下部に残存する草地植生の減少過程と希少性

*高橋瑛乃(高知大・院・理), 比嘉基紀(高知大・院・理), 前田綾子(高知県立牧野植物園), 石川愼吾(高知大・院・理)

高知市内の皿ヶ峰には、約20 haの半自然草地が残存している。しかし、近年、ネザサが分布を拡大し、一部では樹林化も進行している。遷移の進行に伴い草原生植物は確実に減少する。限られた労働力の中で効率よく草原生植物を保全するためには、皿ヶ峰における草原生植物の生育立地を把握しておくことと、保全対象とする種の遷移の進行にともなった消失過程を明らかしておく必要がある。そこで本研究では、皿ヶ峰に生育する草原生植物の保全を目的として、皿ヶ峰の草地面積の変化と遷移の進行に伴う草原生植物の減少傾向を明らかにし、その結果をもとに効率的な保全策についての考察を行った。空中写真から1975年と2010年の皿ヶ峰の相観植生図を作成した結果、皿ヶ峰では、35年間で約41%の草地が消失していた。調査対象とした皿ヶ峰の南側斜面では、北側や東側と比較して草地景観が保たれている割合が高かったが、斜面下部では低木林が増加し、低木林であった場所は高木林に成長していた。植生調査で得られた資料をもとに沼田による遷移度を算出した。草原生植物、準草原生植物の出現種数は遷移度と有意な負の相関を示した。草原生植物16種の出現確率と遷移度の関係をロジスティック回帰分析を用いて検討した結果、ヒメアブラススキやモロコシガヤなど14種が遷移の進行に伴い早期に消失することが推察された。皿ヶ峰において早期に消失する種の多くは、南側斜面の上部に集中していた。これらのことから、皿ヶ峰における草原生植物の効率的な保全のためには、チャートの露岩が多く、ネザサの優占度の低い良好な草地景観が維持されている斜面上部での継続的な刈り取り管理と登山道の整備が有効であり、そのためには主体となる組織の構築および地域・行政との連携は緊急の課題であると考えられる。


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