| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-H-262  (Poster presentation)

河川砂礫堆上の植物群落の組成と構成種の葉の形態的特性の関係

*築地孝典(高知大・院・理), 比嘉基紀(高知大・理), 石川愼吾(高知大・理)

河川砂礫堆上では,流路からの距離や比高,表層堆積物の粒径組成の組み合わせにより,乾燥から過湿まで水分ストレスが異なる立地が形成される。比高が高く土壌の保水性も低い立地では,植物は夏期には極端な高温と乾燥ストレスにさらされ,カワラヨモギやカワラナデシコ,メドハギなど,乾燥ストレスに耐性のある植物の優占する群落が成立することが知られている。乾燥ストレスの耐性は,植物の形態にも反映され,乾燥地に生育する植物は,蒸散量を抑制するため,葉面積が小さく,葉の単位面積当たりの重量(Leaf Mass Area: LMA)が大きくなることが知られている。河川砂礫堆上に生育する植物も,乾燥から過湿までの水分条件に応じて葉の形態を変化させている可能性がある。本研究では,高知県物部川下流の河川砂礫堆上において,植物群落の組成と立地環境及び構成種の葉の形態(葉面積とLMA)について検討を行った。植生調査の結果,水際(礫質・湿潤),高水敷(礫質・乾燥),細い砂の堆積した立地(砂質・中庸)といった立地環境によって種組成が異なっていた。各群落の構成種について,光合成型(C3,C4)と生活型(一年草,多年草)を区分し,葉の形態を比較した結果,多年生C3植物では葉面積とLMAには負の相関(葉面積が大きいほど葉が薄い)が認められた。一方,C4植物では,葉面積とLMAには明瞭な相関は認められなかった。C3植物の葉の形態と立地環境との関係性を検討した結果,LMAは群落間で有意な差が認められた(Steel-Dwass法,p<0.05)。乾燥立地に出現する種は葉が厚く,湿潤な水際と中庸な立地では葉が薄い傾向にあった。以上の結果より,河川砂礫堆上に生育するC3植物は,全体的に立地環境に対応してLMAが変化しているが,C4植物ではLMAがほとんど変化しないことが明らかになった。


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