| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-H-263  (Poster presentation)

樹形・葉の形質からみた林冠構成種の若齢期における光環境に対する応答

*中田貴子, 廣田充(筑波大学)

光は樹木の生存に関わる重要な環境のひとつである。固着性の樹木は様々な光環境に応じる必要があり、実際に、樹形や葉の形質を変えることが報告されている。このような光環境に対する形態の応答は、特に暗い林床で成長せざるを得ない若齢期の樹木において重要である。そこで、本研究では林冠構成種の若齢期における樹形・葉の形質の変化の解明を目的として調査を行った。2016年6月から10月にかけて長野県と茨城県において主要な林冠構成種のアカマツ、コナラ、シラカバ、ミズナラ、ブナ、オオシラビソを対象とし、林冠に到達しない樹高10mまでを若齢期として調査した。若齢期のこれらの樹木の直上の光環境と合わせて、樹冠、葉、および樹形について測定した。樹冠については、樹冠の深さ、投影面積、これら二つの積であるボリュームを、葉についてはSLAを、さらに樹形については、重心ずれ(投影面の重心と根元の間の水平距離)とつぶれ比(樹冠の最小最大直径の比)を算出した。光環境に対する樹冠のボリューム、深さ、投影面積の応答は種間で異なっていた。樹冠に関しては、アカマツは暗い環境でボリュームが小さくなり、コナラとオオシラビソは、ほとんど変化しなかった。一方、シラカバ、ミズナラ、ブナは暗い環境になるとボリュームが大きくなった。ボリュームを深さと投影面積の二要素に分けると、光環境に応じて、それぞれの要素の応答パターンも種ごとに異なることが分かり、種によって光環境に対する樹冠の応答が異なることが示唆された。SLAと光環境の間には関係がみられなかったが、各種の平均SLAには種間で有意な差がみられた。さらに、重心ずれとつぶれ比は各種で異なることが分かった。この光環境に対する樹冠の応答や樹形・葉の形質の種間の違いが、林内での多種共存に関与している可能性がある。


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