| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-J-310 (Poster presentation)
Hamilton(1964)の包括適応度は、親子やきょうだい同士といった血縁者の間では、利他行動が進化しやすく、利己的な行動は抑制されると予測している。しかし、資源が制限された状況下では、たとえ血縁者同士であっても競争が生じる。特に親によって育てられる動物にとって、きょうだいは若齢期における最大の競争者となる場合が多い。きょうだい同士の限られた資源を巡る争い=きょうだい間競争は、親に対する餌乞いや巣内の陣取りといった様々の形態を取るが、その中でもきょうだい間攻撃は、攻撃によってきょうだいの資源を直接奪う、究極的なきょうだい間競争の形態の一つと言える。これまで、多くのきょうだい間攻撃の研究は、親による給餌をめぐる争いや攻撃によって劣位個体が死亡する「きょうだい殺し(siblicide)」に着目してきた。一方、それ以外の研究事例は非常に稀である。私はタンガニイカ湖の野外調査で、親保護下のカワスズメ科魚類Neolamprologus furcifer幼魚が互いに攻撃しあうことを発見した。彼らのきょうだい間攻撃の頻度は成長段階ごとに異なり、その攻撃の背因は彼らの摂餌が小型のエビに強く依存することであると示唆された。N. furciferは子供に給餌を行わない。また劣位個体が優位個体の攻撃によって直接死亡することはなく、これまでのきょうだい間攻撃の研究対象となった種とは異なった特徴を持っている。しかし、攻撃者が攻撃によってどのような利益を得ているのかについては依然不明な点が多い。そこで私は、個体レベルの観察から優位個体がどのような利益(摂餌・生存・分散)を得ているかについて調査した。