| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-J-311  (Poster presentation)

幼体の派手な色と仕掛け技防衛戦術  野外観察によるトカゲの尾ふり行動頻度

*原田龍一(滋賀県立大学 環境科学部)

捕食者は被食者に致命傷となる部分を狙って攻撃するといわれている。一部の被食者は捕食者の攻撃を逆手に取った防衛戦法をとる。例えばトカゲ亜目のトカゲが行う尾振り行動である。この行動は、カナヘビ(トカゲの1種)がヘビ捕食者に対して尾を振ることでヘビの攻撃を引き付けている隙に逃げるという戦術である(mori 1990)。別の例ではトカゲ属のオカダトカゲの幼体は捕食者に目立つ青い尾をしている「栗山武夫 (2012) 」。このことから、捕食者の攻撃を低リスクの尾部に注意を引くことで致命傷への攻撃を逸らす効果が期待されている。
 先行研究では、砂漠に生息する幼体と成体で体色変化が起きるカナヘビでは幼体が成体に比べて尾振り行動を行う頻度が高い。また、派手な幼体は成体に比べて目立つ場所を移動するが成体は低木の下などの目立たない場所で定住化することが報告されているDror Hawlena et.al. (2006),(2009)。しかし、この研究では捕食者に対して尾振り行動を行った微細環境と誰に対して行ったのかが不明である。そこで本研究では、野外環境下で捕食者を人としたダミー捕食者が被食者と遭遇したときの微細環境を元に目立つ形質の有無が行動様式と尾振り行動の頻度との関係について論点をおいた。対象動物は、ヒガシニホントカゲを用いた。この種は幼体が青い尾を持つが成体はその形質が失われる。また、オカダトカゲに近縁種であるので青い尾は捕食者の注意を引く形質と考えられる。調査結果は、幼体と成体とでは行動様式には差が見られなかった。目立つ形質をもつ幼体は成体よりも目立つ環境でのみ尾振り行動を多く行ったことから、目立つ環境下で捕食者に遭遇したとき、捕食者を尾に注意を向ける形質を持つ幼体は、さらに、捕食者の注意を尾に向ける行動を行うことでより致命傷への攻撃を避けるためと考えられる。つまり、幼体の派手な形質は、目立つ環境下で積極的な二次防御を行うためである。


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