| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-J-316  (Poster presentation)

Latrine Site Selection of Raccoon Dogs: Relation between the Selection and Distribution of Latrine Sites.

*Yuko Nakazawa, Takashi Saitoh(Hokkaido University)

 タメ糞場はコミュニケーションの場であるという考えから、その分布は非ランダムであり、形成される場所は見つけやすい特徴的な場所であると主張されてきた。しかし、分布とタメ糞場が形成される環境資源の選好性について、偏りのある調査方法と資源の利用可能量を考慮しない解析が行われており、その主張の信頼性には疑問がある。本研究では均一な踏査を基に、タメ糞場の分布や形態などの特徴を把握し、タメ糞場が形成される微地形への選好性の実証を目的とした。
 タメ糞場の分布を網羅的に記録するため、2015年の秋に10m間隔で1列に並んだ3人以上の調査者が、同じ方角へ一斉に歩き進み、調査地全体を踏査した。
全てのタメ糞場が一様に同じ形態をしていなかったため、集積型と集合型の2つに分類した。2016年の夏に再びタメ糞場へ赴き、継続的な利用と形態変化の有無を記録した。継続利用されていたタメ糞場が形成されている微地形について、タメ糞場とランダムな地点で微地形を計測し、資源の利用可能量に対して実際の利用量を解析することで選好性を調べた。
 2015年秋の時点でタメ糞場は135ヶ所で、集中分布を示していた。翌年まで利用されていたタメ糞場は113ヶ所で、mound型の微地形を選好している一方、flat型とpit型を忌避していた。半年間で消失、あるいは別の型へ変化したタメ糞場はともに集合型で多かった。選好される微地形の分布ではタメ糞場の集中分布を説明することはできなかった。
 以上の結果からタメ糞場は、その形態が時間的に変化しており、利用期間に違いがある事が明らかとなった。タメ糞場はマウンド型の微地形を選好して形成されているが、その微地形の分布に関係なく集中分布していることが明らかとなった。


日本生態学会