| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-J-317  (Poster presentation)

なぜカワウとアオサギは同居できるのか?

*本多里奈, 東信行(弘前大学)

水域を生活圏とする鳥類の多くは集団で営巣することが知られている。集団営巣は集団防衛や希釈効果などのメリットを持つと同時に、営巣位置や巣材、餌などの資源を巡る競争が激化しやすいなどのデメリットも持つが、ペリカン目やコウノトリ目鳥類の複数種から成る集団営巣地(混合コロニー)では、構成種の生態の違いから集団防衛が向上し、競争が緩和するとされている(Burger 1981)。ペリカン目 サギ科鳥類をはじめとする一部の分類群において混合コロニーの形成や維持に関する研究は比較的進んでいるが、異なる目で構成される種混合コロニーも多く存在するにも関わらず、その理解は乏しい。

本研究では大型魚食性鳥類であるカツオドリ目のカワウとペリカン目のアオサギから成る混合コロニーに着目した。この2種を含む混合コロニーは日本でも比較的普通に見られる上、近年個体数が激増しており、漁業に影響を及ぼしているため、保全管理をする上でもコロニーの形成要因や維持機構を解明することは重要である。今回はなぜ2種が共存できるのかを希釈効果や集団防衛、競争に着目して調査を行った。

その結果、両種の繁殖スケジュールが一致していることがわかった。このことから常に高い希釈効果を得られると考えられた。営巣位置はアオサギの方が有意に高く、営巣樹種にも違いが見られた。さらに巣材獲得場所にも種間で違いが見られ、営巣位置や巣材を巡る競争が緩和されていることが示唆された。また、両種とも捕食者となりうる猛禽類等を識別し、その危険性によって反応を変化させることがわかったが、防衛に関しては種によって貢献度に差があることが示唆された。


日本生態学会