| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-J-322 (Poster presentation)
ホンヤドカリ属は繁殖期にオスが左鋏脚でメスを持ち運ぶ交尾前ガードを行う。ホンヤドカリでは、オスがガード中にメスを前後に繰り返し振る奇妙な行動(以下ブンブン行動と呼ぶ)が観察される。本研究は、ブンブン行動の機能について、以下の2つの仮説を立てて検証した;1)オスは貝殻の奥に隠れているメスの性フェロモンを感知しやすくするために、メスを振って水流を作る、2)オスはメス振ってメスを驚かせ、動きを止めさせることによって、メスの性フェロモンが拡散して他のオスを誘引することを防ぐ。これらの仮説を検証するため、実験室内で雌雄の行動を観察した。
その結果、ガード直後の10分間では、オス18個体から延べ141回のブンブン行動が観察された。また、ガードを開始してから数時間経過した10分間では、ブンブンの回数が大きく減少した。これらの結果から、この振る行動は数多く行う必要があり、またコストを伴うものであることが示唆される。しかし、貝殻の奥に隠れたままのメスは少なく、ブンブンされた後も貝殻に隠れなかった。また、ブンブンの前後でメスの身動きの有無にも差が見られなかった。これらの結果は、両仮説とも棄却する。ホンヤドカリのオスがメスを振る行動は振動を利用した求愛シグナルかもしれない。