| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-J-323 (Poster presentation)
被食者にとって、逃避は適応度に大きな影響を与えうる行動であり、逃げ切ることが重要である。その一方で逃避行動は、適応度を増加させる他の活動の中断を伴うため、コストを含む。したがって、逃避行動はコストにも応じて決定していると考えられている。
逃避を開始する際は、いつ逃避するか(逃避開始距離:逃避開始時の被食者と捕食者間の距離)、どのくらい逃避するか(逃避距離:被食者が逃避を開始してから終了するまでに移動した距離)、どのように逃避するか(逃げ方)が重要となる。しかし、逃避行動に関するこれまでの研究の多くは逃避開始距離を指標にしており、逃げ方に着目した研究はほとんどない。そこで、本研究では飛翔と跳躍の2つの逃げ方を示すバッタ(コバネイナゴ)に着目し、草丈や気温といった周囲の環境や被食者の体の特徴、捕食者のしつこさが逃げ方に影響しているかを調べた。なお、翅を羽ばたかせて逃げるときを飛翔、後脚で跳ねて翅は羽ばたかせずに逃げるときを跳躍とした。
実験は野外の草丈が高い草地と草丈が低い草地で行った。コバネイナゴ1個体につきヒトが3回連続で接近し、それぞれの接近に対して飛翔と跳躍どちらの逃げ方で逃げるかを調べた。なお、逃げ方の判定には肉眼記録とカメラ・ハイスピードカメラによる動画記録を組み合わせた。接近1回ごとに逃避開始距離、逃避距離を、1個体ごとに気温、湿度、草丈、性、体重や体長といった被食者の体の特徴についても記録した。
実験の結果、3回の接近のすべてに対してメスは跳躍しやすく、オスは飛翔しやすいことが分かった。また、翅が長い個体ほど飛翔しやすかった。環境が逃げ方に与える影響については、気温が低いとき、湿度が高い時は跳躍の頻度が高くなった。