| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-M-351 (Poster presentation)
水稲の無農薬・無化学肥料(無無)栽培では水田雑草の抑制が最大の課題となっている。これまで、化学農薬を使用しない水田雑草抑制法として、米糠をマルチング材(覆い)として施用する方法などが取られてきた。しかし米糠は窒素含有率が高いため、これらの施用は米の品質低下につながることがある。一般にタケ類は肥料としては不適であると考えられてきたが、その窒素含有率が低い特性を活かして粉末化し水田に施用することにより、水田雑草の発芽を制御するとともに、米の品質を低下させないマルチング材となりうる。本研究では、水田への竹粉の施用が水田雑草の抑制と水稲収量に与える影響を明らかにするため野外実験を行った。石川県羽咋市の自然栽培田において、田植え直後に12の実験枠(2m×1.8m)を設置し、1)対照区(無除草・竹粉無散布区)、2)手除草区、3)竹粉少量散布区(2kg/枠)、4)竹粉大量散布区(10kg/枠)を、各処理区につき3反復ずつ無作為に割り当てた。水稲の栽培期間中、水田雑草の現存量(乾燥重量)、水稲の生育(茎数、稲丈、葉緑素値(SPAD))、米の収量・品質(粗玄米重量、タンパク質含有率、千粒重、整粒歩合、アミロース含有率)の調査を行った。結果、竹粉大量散布区では、対照区や竹粉少量散布区と比べ水田雑草の発生が少なく、水稲の茎数が多く、稲丈やSPADが高かった。さらに、竹粉大量散布区での米の収量は、対照区と比べ約1.6倍多かった。玄米タンパク質含有率は処理区間で異なったものの、いずれの処理区でも平均6%未満の良好な値を示した。その他の米の品質特性には処理区間で差が認められなかった。以上より、竹粉は水稲の無無栽培において新たなマルチング材として活用できる可能性が示された。タケ類の有効活用法の提示は、今後、里山資源を循環利用した循環型農業の振興と拡大した竹林の積極的管理につながることが期待できる。