| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-M-353 (Poster presentation)
本研究の調査地であるミャンマー中央高地のMoe Sw村周辺の森林は、政府により保護林として指定されているにもかかわらず、現在でも住民による林産物利用が盛んに行われており、その結果、森林劣化が深刻化している。このことから調査地の森林の劣化には住民からみた森林資源へのアクセス性が関わっている可能性があると考えられる。そこでまず、異なる時期に撮影された衛星画像(1995年,2005年,2015年)から、調査地内の森林の減少、劣化の状況を地図化した。その上で、住民による森林へのアクセス性と森林減少・劣化の関係を調べた。具体的には、アクセス性の指標として、「ある林分」(30m四方のセルの植生)と道路や村からの「距離」を用いた。次に、算出した「距離」がその林分の時間的変化(例えば高木林→伐採跡地)率に対してどのような影響を及ぼしているのかについて分析した。
その結果、1995年から2005年では、村の近傍では森林劣化が著しく、逆に村からの距離は住民の森林利用を制限する要因になっていることが分かった。しかし、2005年から2015年の間では村及び道路からの距離に関わらず、森林劣化が顕在化していることが分かった。この原因として、アクセス性の良い場所での森林資源が著しく低下し、村や道路から離れた森林にまで住民の伐採活動が及び始めたか、あるいは調査地内で近年大規模に進められている人工林造成のための自然林の皆伐施業が進行していることが考えられた。