| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-M-357 (Poster presentation)
森林の葉フェノロジーは気候や植生タイプ、また樹種間でも異なっており、気候変動による影響を予測するために様々なスケールでの観測が必要である。リモートセンシングを用いた観測には人工衛星や林冠付近に設置したセンサーが用いられている。しかし、観測のコストと効率の両立は課題となっている。そこで本研究では低コストで時空間的な柔軟性に富むUAV(ドローン)を用いた葉フェノロジー観測の可能性を検討した。
本研究ではドローンに搭載されたデジタルカメラで撮影された画像から対象範囲約25haを俯瞰できるオルソ画像を無償ソフトを用いて作成し、この画像からGRVIという手法を用いて植生指数の観測を行った。期間としては緑葉から落葉し終わる10月から12月末まで行った。また比較対象として人工衛星のMODISのLAIデータと全天球カメラで測定されたLAIを用意し、群落・林分スケールごとでの観測の評価を行った。
調査の結果、ドローンの画像のGRVIは落葉性の森林で大きく変化し、明らかに季節性を示す推移を示した。また、群落及び林分でのLAIとの相関は概ね良好であり、このことからドローンによる低コストでのフェノロジー観測の有効性が示された。フェノロジーの時期の推定についてはGRVI=0という既存の方法を用いた紅葉中期の推定は不適であったが、画像との比較から特に林分レベルではGRVIが最小値をとるタイミングが紅葉のピークと一致し、ドローンの画像からフェノロジー時期の推定が可能であることが示唆された。また、メタセコイア林ではこの最小値を示す時期のLAIが落葉前と落葉後のちょうど中間の値をとり、紅葉のピーク時には既に落葉が半分終わっていることが確認された。撮影に関する考察では晴天時に撮影を行った場合オルソ画像に影が生じ、影の部分はGRVIが高く評価される傾向が見られた。このことから曇天時に撮影を行うことでより安定した観測が可能であることがわかった。