| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-M-360  (Poster presentation)

横浜みなとみらい21中央地区におけるチョウ類の生息適地ネットワークの評価

*高増誠, 藤田雄大, 小野祐輝, 横田樹広(東京都市大学)

 高度に開発された都心街区における生物多様性の創出のためには、街路樹等の沿道植栽や接道空間を軸とした連続性の高い緑のネットワークを構築し、生物の生息・移動に寄与する環境を一体的に形成することが重要である。本研究では、みなとみらい21中央地区を対象として、チョウ類の生息適性の観点から街路空間の緑地構造を評価することを目的とした。ルートセンサスにより、街路空間におけるチョウの生息分布と移動経路を把握した結果、2016年4月19~10月31日の計20回の調査で712頭18種のチョウを確認した。これを元に、街区と街区で挟まれた街路(接道緑地内はまとまりのある植生区画)をセグメントとして、優占的に確認されたアオスジアゲハの出現係数(調査ルートあたりの個体数)と緑地環境の関係性について分析した。セグメント内の緑地環境は、緑地面積割合のほか、食餌樹木の出現係数・樹幹長径・樹冠長、50cm/100cm高さの根元訪花植栽被度、植生の階層多様度(草地4階層,樹木6階層の被度を元にShannon-WeanerのH’を算出)を用いた。またシロチョウ科の種の出現係数について、沿道草地を単位に草本高さごとの被度および階層多様度との関係を把握した。アオスジアゲハは、食餌樹木から離れるほど分布確率が下がり、その出現係数は、食餌樹木の出現係数、セグメント内緑地面積割合、樹幹長径、植生の階層多様度の順に相関が高く、根元植栽は0.5m高さの被度より1m高さの被度との相関が高かった。一方、シロチョウ科は、より低茎の草本の被度と出現頻度の相関が高かった。これらより、沿道においてチョウ類の生息・移動環境を形成するためには、移動能力の高い種の食餌樹木を階層的に構成するとともに、その下部および隣接空地で訪花植栽・低茎草本を組み合わせ、高さ方向に連続的かつ多様な資源を有する植栽環境を形成することが有効と考えられた。


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