| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-M-366 (Poster presentation)
海浜では,汀線から内陸に向かって塩分や飛砂量が減少する環境勾配とそれらへの耐性の違いから植物が帯状に分布を変化させる“成帯構造”を観察することができる。しかし,大規模砂丘での海浜植生構造やその成立要因は明らかになっていない。鳥取砂丘は奥行きが1,000 m以上あり,多様な砂丘地形に加えて人為的撹乱の多い海浜砂丘である。そこで本研究では,鳥取砂丘での群落分布と自然・人為要因との関係を解析した。
調査は鳥取砂丘のうち,天然記念物指定範囲146 haを対象とした。優占種や斜面方位をもとに植物群落の位置と形,面積をGPSレシーバーにて記録し,各群落の植被率,全出現種と各種の被度を記録した。調査結果から,クラスター分析による群落分類を行った。環境要因は,自然要因として汀線からの距離,砂変動量,堆砂深を,人為要因として踏みつけと除草種別を使用した。Jacobsの選好度指数を用いて各群落型と環境要因との関係解析を行った。
調査の結果,1,087群落が確認され,クラスター分析により8群落型(A-H)に区分された。出現種の特徴から海浜型群落(A-D)と雑草型群落(E-H)にまとめられた。群落型A・Dは第二砂丘列よりも海側に,群落型Cは砂丘地全域に,残りの群落型は内陸側に多く分布していたが,成帯構造に相当する汀線からの距離に応じた分布は確認されなかった。砂変動量の多い立地には群落型A・Bが選好性を示し,踏みつけの多い立地には群落型E・Hが選好性を示した。除草種別では,機械除草地に選好性を示す群落型はなかったが,群落型Fのみ正の値を示した。このように鳥取砂丘では,砂変動量などの自然要因に加えて踏みつけなどの人為要因が影響して複雑に植物群落が分布していることが明らかになった。