| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-M-369 (Poster presentation)
過放牧等により砂丘の再活動が引き起こされている北東アジア乾燥地の砂地草原では,禁牧,草方格の設置,植物の播種・植栽等の砂丘固定技術が適用されてきた。これらの技術には,持続的な生産活動の再開を可能にする植生回復の促進が求められるが,初期段階においてはとくに,風食の軽減と地表面の安定化が重要である。本研究では,砂丘固定技術適用直後の砂丘地を対象に,初期段階の植生動態および風食抑制への影響を検討した。
対象地の中国内蒙古フルンボイル草原では,植生回復に向けた砂丘固定事業として,草方格の設置,禁牧柵の設置,在来牧草の播種等が実施されている。そこで,施工内容および施工時期の異なる砂丘を複数箇所選定し,植生調査を行うとともに,エロージョンピンを埋設して土壌侵食・堆積量を測定した。解析では出現種数・植被率に関して,施工内容,斜面方位間で比較を行い,とくに播種された2種の在来牧草Caragana microphyllaとElymus spp.の成長を比較した。また土壌侵食・堆積量と植被との関係を調べた。
その結果,出現種数は施工内容の影響を受け,とくに在来牧草播種区では多様な植物の侵入が認められた。一方,植被率は斜面方位の影響を受け,春先の強風期に風下となる東側斜面で有意に高くなった。播種された在来牧草2種の経年変化をみると,Elymus spp.は播種後1〜2年目の成長が顕著であった。一方, C. microphyllaはElymus spp.と比べて初期の成長は緩慢であったが,播種後3年目には植被率を急速に増加させた。土壌侵食・堆積量は植被の影響を受け,植被率の増加によって侵食・堆積量は大きく低下し,一定以上の植被率で風食が抑制されることが示された。以上の結果から、成長速度の異なる草種の混播は,施工初期段階における風食の発生抑止に効果的であることが示唆された。