| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-M-370 (Poster presentation)
生態系管理や利用のため、生態系サービスの評価は盛んに行われているが、文化的サービスの定量的な評価は不足している。地域特有の食文化を支える山菜は、供給・文化両面の性質を持つ重要な生態系サービスである。そこで、山菜の利用に影響している要因を解明することを目的とし、山菜として利用されている植物種の自然分布と山菜の利用実態の関係を比較し、利用分布を説明する要因を解析した。
山菜の利用が盛んである東北地方と新潟県全域において、地域性を反映しやすい販売形態である道の駅106駅にて、店頭で販売されていた種の記録、店員への聞き取りを行い、各道の駅で販売されていた山菜の種を調査した。一方で、植生調査データ、気候、土壌分類、地形データより各山菜の潜在分布予測モデルを作成し、各山菜の潜在的分布を予測した。また、潜在分布種数、気候、地形、土地利用の多様性、土地利用、総人口、高齢化度、産業、道の駅の属性、県を説明変数に用いて、利用分布種数を説明する要因を解析した。
全体で計53種の山菜が販売されており、1地点の最高販売種数は24種だった。利用種数は新潟、山形、秋田で多く、太平洋側で少なかった。利用種数の多い県では、分布の限られる種と、他の県では利用されない種の両方を多く利用していた。特に、山形県は最も山菜利用数が多く、県全体で利用種組成が類似していた。これには、米沢藩では、飢饉救済として野生動植物の利用方法が記された手引書が頒布された歴史的背景が関係する可能性があり、山菜の起源としての恐慌作物を示唆する。利用種数を説明する要因では県、積雪が最も重要度が高かった一方、積雪は潜在種数を説明する要因としての重要度が低く、むしろ利用分布に関係していることが分かった。したがって、山菜の利用が多雪地の生活との関係することを示唆する。