| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-N-380  (Poster presentation)

ニューラルネットワークを用いた海底画像からの海藻被度判別

*青田智来(東北大・生命), 千葉聡(東北大・東北アジア)

 藻場は様々な種の海藻の群落であり、例えばその高い物質生産能力あるいは消波能力から生物の住処や産卵場所としての役割を果たすなど、多様な側面から海洋生物の生物多様性の向上に対して大きく貢献している。一方で、藻場は近年の気候や環境の変動に対して大きく影響を受けており、藻場の減少による生態系あるいは漁業的損失は計り知れない。以上の事から藻場とそれを取り巻く生態系の解明や保全は非常に重要な課題であると考えられる。
 藻場の保全や維持を考える上で、まず藻場の被度や分布、種構成を調査し把握していく事が必要であると思われる。しかし水中での調査は陸上での調査に比べコストがかかる為に長期間、広範囲にわたる藻場の調査を難しくしている。
 今回私達はニューラルネットワークを用いて海底画像から海藻の被度を自動判別するプログラムを作成した。ニューラルネットワークとは機械学習の1種であり、近年様々な分野で応用が行われている。特に画像認識分野ではConvolutional Neural Networkと呼ばれる手法を用いたものが高い精度を示しており、本研究はこのConvolutional Neural Networkを用いてネットワークを作成した。またニューラルネットワークにおける学習は計算量が膨大になる為、高速学習を可能にするフレームワークを利用して行う事が一般的であるが、今回私達は汎用的な環境で動作する事を目指し、これらのフレームワークを用いずにネットワークを構築し、学習を行った。これにより海底画像から海藻群落の被度を自動で判別する事を可能にした。また入力サイズを制限し、粗い画像を入力としたネットワークからも一定の精度で海藻を認識する事が出来た。
 本研究はニューラルネットワークを用いて海底画像から海藻の被度判別を行った初めての研究であり、海藻被度の判別の自動化により藻場の現地調査におけるコストを低下させる事で長期間、広範囲の調査につながると考えられる。


日本生態学会