| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-N-392 (Poster presentation)
原産地から新しい地域に移入した植物のうち、移入先で定着し、分布拡大することができる種は限られている。分布拡大に成功した外来種の生態を明らかにすることは、今後どのような種が分布拡大しやすいのかを予測する上で重要である。
オッタチカタバミは日本の攪乱環境に定着した外来種である。本研究では近縁の在来種カタバミと外来種オッタチカタバミの①乾物分配の違いと②光や土壌養分といった資源が生育に与える影響の違いを明らかにすることで、オッタチカタバミの生態的特性を明らかにし、オッタチカタバミが日本で分布拡大に成功した要因を検討した。乾物分配を2種で比較すると個体の全重量に対する果実重量比はカタバミよりもオッタチカタバミで多いのに対し、根重量比はオッタチカタバミよりもカタバミで多かった。このことは繁殖器官と貯蔵器官にトレードオフの関係があり、オッタチカタバミは繁殖分配が高いことを示す。資源が生育に与える影響を比較するために強光・富栄養区(資源の多い環境)と弱光・貧栄養区(資源の少ない環境)という2種類の調査区を設定し、それぞれの調査区で2種の4月から7月への開花・結実数の変化を調査した。カタバミは強光・富栄養区と弱光・貧栄養区で開花・結実数にあまり差がないのに対し、オッタチカタバミは差が大きく、強光・富栄養区で開花・結実数が多かった。このことからオッタチカタバミは資源に対する可塑性が大きいと考えられる。さらに、オッタチカタバミは夏期にも果実生産速度が減少しなかったことは、強光に対する耐性もあることを示す。以上の結果から、オッタチカタバミには①繁殖分配が大きく、②資源に対する可塑性が大きく、③強光に対する耐性があると考えられる。これらの生態的特性のために、外来種オッタチカタバミは日本の攪乱環境に適応し分布拡大することができたと考えられる。