| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-N-394  (Poster presentation)

植物種の分布の拡大と維持の能力に影響する生態的・遺伝的形質

*香取拓郎(東北大・生命), 牧野能士(東北大・生命), 小黒芳生(森林総研), 河田雅圭(東北大・生命)

 生物の分布と多様性におけるパターンとその成立要因を解明することは、生態学、生物地理学における中心的目標である。分布や多様性のパターンが成立する際の重要な要素として、各生物種の気候的ニッチ幅がある。ニッチ幅に影響を与える要因としては、遺伝子重複率とニッチ幅に正の相関があることがショウジョウバエや哺乳類で報告されている。しかし、その他の様々な生態的・遺伝的な形質については、ニッチ幅への影響を検証した研究例はほとんど無い。これまで、カリフォルニア州の植物の様々な形質を対象にした解析では、倍数性にニッチ幅との弱い正の相関が見られたが、世界全体の植物を使って、グローバルなパターンを解析する必要がある。また植物では、高緯度ほど先駆種(種子が軽く、高さが低く、成熟が早い)の割合が増加するため、群集の各種が持つ形質の割合は、緯度(気候)からも影響を受けていることが指摘されている。そのため、ニッチ幅は緯度(気候)からも間接的または直接的に影響を受けている可能性がある。そこで本研究では、世界の植物を用いて、遺伝的多様性、世代時間、種子散布距離に関連した形質が気候ニッチ幅に与える影響を解析し、さらに、生育地が低緯度か高緯度かによって形質の割合およびニッチ幅が異なるかどうかも解析した。それにより、植物の地球規模の形質およびニッチ幅の地理パターンを明らかにした。


日本生態学会