| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-N-400 (Poster presentation)
タンポポの生育形態の季節変化
○上赤菜都美1,太田謙2,波田善夫1
(1岡山理科大・生地,2岡山理科大・自然フィールドワークセンター)
カンサイタンポポ(Taraxacum japonicum Koidz.)は春の初めに花をつける多年草であり、定期的に草刈りがされる草地に生育する。タンポポ属植物の分布に関する報告は多いが、形態の季節変化やライフサイクルについては詳しくわかっていない。そこで本研究では草刈りや火入れなどの管理形態に着目して、岡山県のカンサイタンポポ生育地で定期的に植生調査および形態計測を行った。その結果から、生育地の植生と生育するタンポポの生育形態の季節変化を明らかにすることを目的とした。
調査は、岡山県岡山市及び高梁市の河川堤防法面の4地点で行い、1m×1mの方形区を各調査地に4~6地点設置して行った。調査期間は2016年3月~2017年2月であり、各調査枠内において、植生調査及びタンポポの形態計測を行った。形態計測は展葉した葉の中で最長のものを測った。調査は一年間のライフサイクルを見るために来年度まで継続予定である。
調査の結果、カンサイタンポポは夏季には根生葉が見られず、10月~11月の間に根生葉の展葉を始め、その後、5月~6月まで葉を維持していた。展葉する個体数は、10月から12月にかけて増加する傾向があり、1月・2月にはやや減少した。根生葉の長さも同様に10月から12月に長くなる傾向があったが、1・2月はやや短くなった。
調査地を斜面方位で比較した場合、秋季から冬季(10月~2月)にみられた根生葉の長さの平均は、斜面方位が北向きの調査地(8.5cm)よりも南向きの調査地(11.6cm)の方が約3cm長かった。また秋季から冬季に方形区内に出現するタンポポ属植物の個体数の平均は、北向きの調査地(3.8個体)が南向きの調査地(2.9個体)に比べ多かった。日照条件がタンポポ属植物の生育形態に影響していると考えられた。