| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-P-434 (Poster presentation)
【はじめに】
蛇紋岩地域では、土壌がNiなどの重金属やMgを多量に含むことや、土壌発達が遅く貧栄養であるなどの理由から特徴的な植生が形成され、固有種も多くみられる。蛇紋岩土壌に成立する植生の特徴として乾燥適応的な形態が挙げられる。そのような形質をもたらす要因として土壌の重金属濃度や高いMg濃度などの影響が考えられてきたが、その詳細なメカニズムはいまだに不明である。そこで本研究では蛇紋岩土壌の特徴の1つである低い水分保持能力に注目し、蛇紋岩土壌に生育する樹木の水利用を解明することを目的として、水分生理に関する形質を計測し、樹木が乾燥適応的な形質を持つ理由を考察した。
【方法】
京都府北部の大江山の蛇紋岩地域と隣接する非蛇紋岩地域の落葉広葉樹林にそれぞれ調査プロットを設置し、両方のプロットに共通して生育する樹種(コナラ、リョウブ、ホオノキ、アセビ)を対象とした。試料採取は梅雨明けの2016年8月に主に行った。水分生理の指標として先の樹種に関して葉の水ポテンシャルやP-Vカーブの作成などをし、様々な水分生理に関する形質の計測を行った。結果では、蛇紋岩土壌に生育する樹木と森林土壌に生育する樹木間で検定を行い比較した。
【結果・考察】
アセビを除いたほかの樹種では乾燥適応的な形質がみられ、蛇紋岩土壌に生育する樹木が乾燥ストレスをうけていることが分かった。しかし、乾燥適応的な形質の現れ方は樹種によって異なり、種ごとに異なる戦略で乾燥に適応していることが分かった。コナラでは葉の水ポテンシャルを低下させ、吸水能を高めるような適応、ホオノキでは乾燥ストレスのかかる日中に気孔を閉じ、脱水を回避するような適応、リョウブではコナラとリョウブの中間的な適応をしていると考えられる。
アセビに関しては乾燥適応的な形質はみられなかった。これは、アセビは常緑樹であり、ほかの樹種と比較して光合成活性が低かったためであると考えられる。