| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-P-436 (Poster presentation)
[背景]ケイ素は植物の複合ストレスを緩和する有用元素である。ケイ素は蒸散に伴い葉に運ばれ、一度葉内に入ると転流はされず、落葉まで葉齢とともに増加を続けることがイネ科植物などで報告されている。しかし、広葉樹において異なる葉齢の葉のケイ素含有量を比較した研究はこれまで報告されていない。また、広葉樹の葉は葉柄、葉脈、葉身という機能の異なる部位によって形成されているが広葉樹の葉の部位ごとのケイ素集積の違いは報告されていない。本研究では (1) ケイ素含有量は葉齢に伴い増加する、(2) ケイ素は蒸散の活発な葉身部において集積されるという二つの仮説を立てて実験を行った。
[手法]京都市内の国有林、植物園、および私有地において広葉樹4種 (イヌビワ、ホソバイヌビワ、カジノキ、ウリハダカエデ) の当年枝をマークして追跡調査を行った。2016年5月、8月、10月の3回にわたりここの葉に油性ペンで葉序を記し、枝の長さと生存葉の枚数を記録した。それぞれの枝から5月に葉を1枚採取し、同じ枝から10月に、5月の時点で成熟していた葉の中から状態がいいものを1枚採取した。成長と葉の入れ替わりの早いカジノキでは8月に1枚採取し、10月に8月に採取した葉と疑似対生していた葉を採取した。採取した葉は葉柄、主脈、葉身に切り分けて乾燥・粉末化した。粉末を1%炭酸ナトリウム水溶液に加えて85°Cで一晩振とうし、抽出液のケイ素濃度をモリブデンブルー法を用いて測定した。
[結果]すべての種において葉齢にかかわらずケイ素は葉身に局在し、葉柄、主脈にはわずかにしか含まれなかった。また、葉身におけるケイ素含有用は葉齢とともに増加し、例えばイヌビワでは5月から10月に3.8 から23.8 mg/g (mg Si/g dry mass) に増加した。 この結果から葉身のケイ素の大部分は展葉後に葉齢に伴って集積されていくことが示唆された。