| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-P-437 (Poster presentation)
関東地方の放棄二次林ではアズマネザサの繁茂が林床植物の種多様性を著しく減少させている。アズマネザサが通年にわたって繁茂することは、林床の光環境と林床植物の光合成能力、両者の季節変化を介して、植物の純光合成量を減少させると考えられる。さらに、ポリネータの訪花頻度が光環境に依存している場合、アズマネザサの繁茂は林床植物の繁殖成功度(結果率、結実率)も低下させると考えられる。
これらの仮説を検証するため、神奈川県川崎市の放棄二次林にアズマネザサの「刈り取り区」と「対照区」を設置し、常緑多年生草本であるヤブランとオオバジャノヒゲを対象として、林床の光合成有効放射量(PAR)、林床植物の光-光合成曲線、最大光合成速度(Pmax)、ポリネータの訪花頻度、結果率を調査した。刈り取り区と対照区のいずれにおいても、林床のPARと林床植物のPmaxは冬季(12~4月)に増加する傾向が認められた。しかし、PARと光-光合成曲線から推定した純光合成量を比較すると、対照区では純光合成量がプラスになる期間が極めて短く、一年の大半で収支がマイナスとなることが示された。対照区で開花したのはヤブランだけであり、開花量・結果率・ポリネータの訪花頻度のいずれも、刈り取り区に比べると著しく低かった。
アズマネザサの繁茂は、林床の光環境、林床植物の光合成能力、両者の季節変化、ポリネータの訪花頻度など、様々な過程を介して常緑多年生草本の繁殖成功度を低下させていることが明らかとなった。