| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-P-438  (Poster presentation)

中国半乾燥地の緑化樹種Juniperus sabinaのアレロパシー活性について

*秦龍(岡山大学大学院環境生命科学研究科), 三木直子(岡山大学大学院環境生命科学研究科), 張国盛(中国内蒙古農業大学), 藤井義晴(東京農工大学大学院農学研究院)

Juniperus sabinaは毛烏素砂地に自生するヒノキ科の匍匐性常緑針葉樹である。流砂の防止効果が非常に高く、また水の再分配により、他の植物の定着や成長を促進する効果を持つことが期待されている。その一方で、本種は同じ地域のArtemisia ordosica(キク科の落葉半灌木)等の数種と排他的に分布することも報告されており、アレロパシー効果により他種の発芽等を抑制することも予想される。緑化樹種として効果的に利用するためにはアレロパシー作用の確認が不可欠である。アレロパシーの作用経路のうち、今回は揮発性物質として放出される揮散についてディッシュパック法(藤井 2009)を用いて評価した。評価にあたっては、毛烏素砂地の代表的な緑化樹種8種が検定植物であるレタス(Great Lakes 366)の種子の発芽及び初期成長に与える影響、J. sabinaが同じ生育地に分布するA. ordosicaの種子の発芽に与える影響、J. sabinaの揮発性アレロパシー物質の分析を行った。その結果、J. sabinaは検定植物であるレタスに対してそれほど著しい阻害作用を示さなかったが、A. ordosicaには極めて著しい阻害作用を示した。また、揮発性物質としてSabinene、α-Pinene、β-Myrceneの三種のモノテルペン類化合物が検出された。これらの物質はいずれも発芽等に対して阻害作用があり、またその効果には種特異性があることが報告されている。したがって、同じ生育地に分布する種のうち、ある特定の種に対して、非常に強い阻害効果を示す可能性が考えられた。J. sabinaは砂丘の固定効果が高く、非常に重要な緑化樹種の一つであるが、緑化を効果的に進めるうえでは共存できる種とできない種について十分に知っておくことが重要であり、そのために今回用いたディッシュパック法は有効な手段であると考えられた。


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