| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-P-442 (Poster presentation)
熱帯地域では,多くの樹木は明瞭な成長輪構造を形成せず,温帯地域のように年輪を用いた解析が困難である.木材中の酸素安定同位体比(δ18O)は,主に樹木が根から吸い上げる水のδ18Oと相対湿度によって決定され,年輪ごとに異なる値をとり,年輪内でも材の形成時期に応じた値をとる.また,同じ生育環境下の個体間では相関が高いことが期待される.これを利用して,ある地域におけるδ18Oの平均的な変化パターンを得ることができれば,熱帯地域の樹木でも従来の年輪解析に相当する解析が可能になると考えられる.本研究では,年輪のある熱帯樹木を用いて,酸素安定同位体比の季節変動の個体内・個体間の同調性の評価を行う.
調査は季節熱帯に属する東北タイのサケラートと湿潤熱帯に属する半島マレーシアのアイール・ヒタムにて行った.試料として,サケラートではTectona grandis 7個体,Afzelia xylocarpa 6個体を,アイール・ヒタムではPeronema canescens 7個体を用いた.直径5 mmの成長錐を用いて1個体につき2方向から試料を採取した.採取した試料は,クロスデイティングの後,半径方向に一定間隔で切り分け,δ18Oを測定し,得られたδ18Oの値を年輪ごとに比較し,個体内・個体間の類似度を評価する.また,材中のδ18O変化と調査地で採取した降水のδ18Oの変化との比較を行う.