| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-P-443  (Poster presentation)

タイ北部において乾季の水ストレスがチークの落葉時期と葉の生理特性に及ぼす影響の解明

*落合拓朗(三重大院・生資), 松尾奈緒子(三重大院・生資), 吉藤奈津子(森林総研), 田中延亮(東大院・農), 鎌倉真依(京大院・農), Chatchai, Tantasirin(カセ大・林), 田中克典(JAMSTEC)

タイ北部の落葉性チーク林では,モンスーンによる雨季の開始・終了時期の年々変動とともに展葉・落葉時期が年々変動すること,そして,土壌水分が着葉期間に影響する主要因であることが報告されている.著者らは乾季の土壌水分の低下がチークの落葉時期に与える影響を解明するため,上記チーク林において2個体を対象として乾季からそれぞれ2年間と1年間にわたり散水実験を行った.環境条件として土壌体積含水率・土壌PF値・大気飽差・気温・日射量を個体付近で測定した.落葉時期を推定するために散水木2個体と自然条件下の対照木2個体を付近のタワーから固定カメラで撮影して葉数の変化を調べた.また,乾季中や落葉前後の葉の光合成特性を評価するため,散水木2個体と対照木2個体の葉を2週間毎に各3枚ずつ採取し,葉の窒素含量を測定した.さらに,その葉のスキャン画像からRGB(赤,緑,青)を抽出し,その葉の緑色の指標(Green Excess Index,GEI)を算出した.
その結果,乾季の土壌水分の低下がチークの落葉を促進させる要因であり.土壌体積含水率が閾値を下回ると(PFに換算すると深度20cmでは3.34-4.65,深度40cmでは3.17-3.95)チークの落葉が開始することがわかった.さらに,乾季後半から大気飽差が上昇しており,散水木の葉数の減少と関係があったことから,大気飽差の上昇もチークの落葉を促進させる要因であることが示唆された.葉の窒素含量は対照木・散水木ともに落葉と同時期(乾季中)に低下していたことから,落葉期間中に葉内の窒素を樹幹部に転流させていると考えられた.また,散水木において葉のGEIが落葉開始前から上昇し始めていたことから,落葉前に葉の光合成能力が低下し始めていたことが示唆された.


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