| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-A-004  (Poster presentation)

ツバメ類における尾羽の機能と進化

*長谷川克, 新井絵美, 沓掛展之(総研大・先導研)

ツバメ類にみられる長い尾羽は古典的な性選択形質とこれまで考えられてきたが、近年では、むしろ飛翔時の操作性の高さゆえに進化したという説が主流となっている。尾羽が長くなるほど飛翔速度は損なわれるものの、ある程度長い尾羽のほうが最小回転角が小さく、機敏に飛び回わることができるという。しかしながら、このような飛翔性能が実際どのような生態的な文脈において有利になっているのかはわかっておらず、長い尾羽の機能は未だに不明のままになっている。本研究では、機敏性が最も重要と考えられている大型昆虫の採餌という文脈に着目し、1)ツバメ類の尾羽と餌サイズとの関係を系統種間比較し、栄養価の高い大型昆虫を採餌する種で実際に尾羽が発達しているかどうか調べた。さらに、2)大型昆虫を採餌するツバメの1種、リュウキュウツバメを用いて、餌量不足時の尾羽への自然選択を測定した。その結果、大型昆虫を採餌する種ほど尾羽が短くなり、また、餌不足時のリュウキュウツバメでは、尾長に負の方向性選択が働いていた。これらの結果は、効率的な採餌を行なうには短い尾羽のほうが有利であり、長い尾羽は求愛など別の文脈で進化したことを示唆している。


日本生態学会